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2008年~2012年のお知らせ

橋本達夫助教、石黒裕章大学院生ら国際共同研究グループの研究成果がNature誌に掲載されました

2012.07.24
横浜市立大学循環器・腎臓内科学(梅村敏 教授)の橋本 達夫 助教、オーストリア科学アカデミーのIMBA研究所(ヨゼフ・ペニンガー 所長)、筑波大学TARAセンター(深水昭吉 教授)の共同研究グループは、主に血圧や電解質の調節を行っているレニン‐アンジオテンシン系※1の一因子であり、これを負に制御しているACE2 (Angiotensin Converting Enzyme 2)が、アミノ酸吸収や腸内環境※2を整える働きをしていることを突き止めました。

○概要
栄養不良は人類死亡の主な原因であり、多くの場合下痢や腸炎を伴います。
一方、レニン‐アンジオテンシン系は、血圧や電解質の調節を行っている、生体の重要な生理機構です。
研究グループは、通常はレニン‐アンジオテンシン系を負に制御して心臓や腎臓などの臓器を酸化ストレスによる障害から保護しているACE2が、腸管上皮でアミノ酸吸収を制御しており、抗菌ペプチド発現や、腸内細菌叢の構成を制御している(横浜市大HPの紹介ページ内の図参照)という予想外 なメカニズムを、マウスを用いた研究で明らかにしました。 本研究成果は、科学雑誌『Nature』(7月26日号)に掲載されます。 なお、表紙に本研究が採用されます。

○背景
 世界では10億にも上る人々が栄養不良であり、現代でも人類死亡の主な原因です。
栄養不良には多くの場合下痢や腸炎を伴います。
特にアミノ酸欠乏ではペラグラ※3という下痢、皮膚炎、脳症をきたします。
偏った栄養摂取が腸内環境をどのように制御しているかは、これまでよくわかっていませんでした。

○研究手法と成果
 レニン‐アンジオテンシン系の構成要素であるACE2の遺伝子欠損マウス(ノックアウトマウス)に、実験的に腸炎モデルを作成すると、ACE2ノックアウトマウスでは、腸炎の程度、腸管上皮の抗菌ペプチド発現や、腸内細菌叢の構成に大きな違いがある(横浜市大HPの紹介ページ内の図参照)ことが分かりました。
ペラグラ治療薬であるニコチンアミドは、これらの違いを改善しました。
 研究は、アミノ酸欠乏による腸炎のメカニズムを初めて解明しました。
血圧や電解質を調節しているレニン‐アンジオテンシン系の、予想外な役割が判明しました。

○今後の期待
 本研究は、アミノ酸吸収障害という栄養不良でみられる腸炎のメカニズムを解明しました。
すなわち、腸管上皮でのアミノ酸吸収が、抗菌ペプチド発現、腸内細菌叢を制御していました。
今後は、どのようなアミノ酸が腸内環境維持に必要なのか、腸炎を含むさまざまな病態での解析が期待されます。
それぞれの病態で、必要なアミノ酸を補充することが、症状改善につながる可能性があります。
(文責:橋本 達夫)


<用語解説>
※1 レニン‐アンジオテンシン系
 主に血圧や電解質を調節している、生体の重要な生理機構。
酸化ストレス、炎症や血管新生などの多彩な作用を持っていることが、最近報告されています。

※2 腸内環境
 腸内環境は、下痢や便秘といった症状と密接に関連しており、生体内で最大の免疫系である腸管免疫によっても制御されています。
腸内環境は、腸内細菌叢の構成の違いと密接に関連していると考えられています。

※3 ペラグラ
 ナイアシン欠乏症。
ナイアシンは必須アミノ酸の一つであるトリプトファンから体内で合成されるため、トリプトファン欠乏で発症します。
皮膚炎、下痢、認知症を3徴とします。
皮膚炎は日光に当たることで発症する光線過敏症が特徴的です。
消化管症状は下痢にとどまらず、嘔気嘔吐や口内炎も伴います。
脳症は認知症にとどまらず、意識障害や幻覚を伴うこともあり、最悪の場合、死に至ります。
治療としてナイアシンを経口摂取します。


Nature誌 本文 http://www.nature.com/nature/journal/v487/n7408/full/nature11228.html
Nature誌 解説 http://www.nature.com/nature/journal/v487/n7408/full/487437a.html
横浜市大HPの紹介ページ http://www.yokohama-cu.ac.jp/univ/pr/press/120724.html

循環器・腎臓内科学の田村功一准教授,涌井広道助教ら(GR)の研究が日本老年医学会「ノバルティス老化および老年医学研究基金」受賞しました

2012.06.28
横浜市立大学先端医科学研究センターのプロジェクト『ゲノム・プロテオーム・ICTを用いた生活習慣病予防に向けた開発型研究』のサブプロジェクトリーダーを務める病態制御内科学/循環器・腎臓内科学の田村功一准教授,および涌井広道助教ら(GR)の研究が,社団法人日本老年医学会の公式助成事業である「ノバルティス老化および老年医学研究基金」(http://www.rounenkikin.jp/)の20012年度(第26回)研究助成の受賞者に決定しました.
授賞式は,平成24年6月28日に,東京国際フォーラムで開催される「第54回日本老年医学会学術集会総会」(2012年6月28日~30日; http://www2.convention.co.jp/54jgs/index.html)において行われました.
田村准教授,涌井助教らの研究グループGRによる今回の研究課題は、「加齢にともなう生活習慣病に対する,生活習慣病増悪因子受容体への直接結合性機能制御因子に着目した病態解明・新規分子治療標的の研究」と題して,田村准教授らが世界で初めて単離・同定に成功したAT1受容体結合性低分子蛋白(AT1 receptor-associated protein; ATRAP)による,『病的刺激によるAT1受容体情報伝達系の過剰活性化に対する内在性抑制機序』の観点から,加齢にともなう生活習慣病の病態生理の解明,および新規分子標的治療法の開発をとする試みです.
本研究の内容の一部は,田村准教授が,第75回日本循環器学会総会シンポジウム,第54回日本腎臓学会学術総会シンポジウム,第41回日本心脈管作動物質学会シンポジウムにて講演を行い,また,本年9月の第35回日本高血圧学会総会シンポジウムでの指定講演演題,本年10月にオーストラリアのシドニーで開催される第24回国際高血圧学会での口演発表演題として取り上げられるなど,非常に注目されています.
今後は横浜市立大学先端医科学研究センターのプロジェクトリーダーとして,また,循環器・腎臓内科学の研究グループGRとして,当該助成金も活用して,これまで得られた知見をさらに深めることによって,加齢にともなう生活習慣病の分子レベルでの成因を明らかにし,新規分子標的治療法を開発することを目指します.

(文責:田村 功一)

横浜市立大学 トピックスの紹介はこちら.
http://www.yokohama-cu.ac.jp/amedrc/res/k_tamura_201204.html

横浜市立大学 先端医科学研究センターの紹介はこちら.
http://www.yokohama-cu.ac.jp/amedrc/index.html

日本老年医学会「ノバルティス老化および老年医学研究基金」の紹介はこちら.
http://www.rounenkikin.jp/

第54回日本老年医学会学術集会総会の紹介はこちら.
http://www2.convention.co.jp/54jgs/

第35回日本高血圧学会総会の紹介はこちら.
http://www.congre.co.jp/35jsh/program.html

第24回国際高血圧学会の紹介はこちら.
http://www.ish2012.org/program.asp 

デキストラン硫酸を用いた吸着型血漿浄化器を使用した血漿交換療法」が厚生労働省の先進医療(新規技術)に承認されました

2012.06.01
「デキストラン硫酸を用いた吸着型血漿浄化器を使用した血漿交換療法」が先進医療(新規技術)に承認される

 平成24年4月1日,病態制御内科学/循環器・腎臓内科学(梅村敏教授、田村功一准教授)と附属病院血液浄化センター(戸谷義幸准教授)らの研究チームによるトランスレーショナルリサーチ「デキストラン硫酸を用いた吸着型血漿浄化器を使用した血漿交換療法(閉塞性動脈硬化症)」が,厚生労働省の先進医療(新規技術)に承認されました.

 本先進医療では,既存の治療が困難である,あるいは既存の治療抵抗性であり,300 m未満の歩行による下肢疼痛の出現(間歇性跛行),安静時疼痛,潰瘍や壊疽などのフォンタンIIb以上の症状が認められる一方,LDLアフェレシスの保険適応とならない,高(LDL)コレステロール血症を認めない治療抵抗性の閉塞性動脈硬化症を対象としています.

 高(LDL)コレステロール血症は動脈硬化の最大の危険因子とされています.

本先進医療に用いるリポソーバーLA-15システムは,日本国内で開発された医療機器で1986年に家族性高(LDL)コレステロール血症に保険適応となり,薬物治療によってもコレステロールが低下しない高(LDL)コレステロール血症を対象に治療が行われてきました.

その後1992年に閉塞性動脈硬化症,巣状糸球体硬化症ともに高(LDL)コレステロール血症を呈する場合に保険適応となり今日に至っており,実績がある治療法です.
一方,維持血液透析患者では,高(LDL)コレステロール血症を呈しなくとも治療抵抗性の難治性かつ重症の閉塞性動脈硬化症が多く,薬物療法,血管外科的治療が無効であり下肢切断術を施行せざるを得なくなり患者のQOLと予後が著しく阻害されることが少なくありません.
このような維持血液透析患者の治療抵抗性閉塞性動脈硬化症に対しては,以前から,高(LDL)コレステロール血症が認められない場合にも,デキストラン硫酸を用いた吸着型血漿浄化器を使用した血漿交換療法(LDLアフェレシス)が施行されて複数の小規模臨床研究にて有効性が報告され,また,臨床的にも試験的に施行されてきました.

 本附属病院腎臓・高血圧内科,血液浄化センターでは,2003年からトランスレーショナルリサーチを開始し,まず,維持血液透析患者の治療抵抗性閉塞性動脈硬化症に対するLDLアフェレシスの効果が治療開始前の血中(LDL)コレステロール値に依存せず,高(LDL)コレステロール血症が認められなくともLDLアフェレシスが長期的な治療効果(最大歩行距離の延長,足関節上腕血圧比(ABI)の改善)をもたらすことを明らかにしました.
さらに,血管内皮特異的NO合成酵素の活性化を介した血管内皮細胞機能の改善がLDLアフェレシスによる治療効果に重要であることを世界で初めて明らかにし,独創性の高い研究成果として米国心臓病協会 (American Heart Association, AHA) 刊行の一流国際学術誌Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology に発表しました.

 上記の成果により,今回,本附属病院腎臓・高血圧内科,血液浄化センターによる,血液透析患者に限らず,高(LDL)コレステロール血症を認めない治療抵抗性の閉塞性動脈硬化症患者を対象としたLDLアフェレシス治療が,厚生労働省により新規の先進医療技術として全国で初めて認可され(該当先進医療名称:デキストラン硫酸を用いた吸着型血漿浄化器を使用した血漿交換療法,算定開始年月日:平成24年4月1日),医学的にも当療法の先進性と有効性が認められました.
現在は全国で本附属病院のみで行われております.
 本治療法は,保険適応が認められない,高(LDL)コレステロール血症を認めない治療抵抗性の閉塞性動脈硬化症を対象としています.

 LDLアフェレシスによる治療の具体的な方法は,LDLアフェレシス専用機器を用い原則として前腕上腕血管(動脈,静脈),内シャント血管から17Gの留置針にて脱血(100~150 ml/分)し,血漿分離膜にて血球成分と血漿成分に分離し,選択吸着カラムにて(LDL)コレステロールなどを選択的に吸着除去します.
LDLアフェレシスの一回当たりの治療時間は約2時間かかり,ベッド上での安静が必要です.
LDLアフェレシスの治療スケジュールは,計10回の治療を予定しており,1週間に1回もしくは2回のLDLアフェレシス治療を行いますが,治療頻度は血液浄化センターの状況などにより変わります.
また,血液透析患者の場合には,LDLアフェレシス治療を血液透析日に施行するか非透析日に施行するかにつきましても,血液浄化センターの状況などにより変わります.

 病態制御内科学/循環器・腎臓内科学/附属病院腎臓・高血圧内科/血液浄化センターでは,高血圧,慢性腎臓病,および末梢動脈疾患を含む心血管合併症の治療に積極的に取り組んでいます.
附属病院循環器内科とも緊密に連携しながら最先端の医療を提供することで,これらの疾患で苦しむ方々のためにお役に立てるよう日々奮闘しています.
(文責:田村 功一)

附属病院 先進医療の紹介はこちら.
http://www.fukuhp.yokohama-cu.ac.jp/about_hospital/approach/advance.html

大学先端医科学研究センター 先進医療の紹介はこちら.
http://www.yokohama-cu.ac.jp/sensin/index.html
http://www.yokohama-cu.ac.jp/sensin/topics/dextran_120501.html

小林助教、平和准教授らゲノムグループの研究成果がHypertension誌に掲載されました。

2012.05.30
小林助教、平和准教授らゲノムグループが高血圧の原因遺伝子として発見し、
現在世界中で最も注目されている遺伝子ATP2B1に関して、
動物モデルにおいて初めて高血圧との関連を証明した研究成果がHypertension誌に掲載されました。

梅村敏教授らの研究グループが、全世界26万人以上を対象とした国際共同研究において、高血圧症に関連する遺伝子を解明し、「Nature」誌に掲載されました。

2011.09.13
当教室 梅村敏教授らの研究グループは、愛媛大学田原康玄講師、三木哲郎教授、大阪大学荻原俊男名誉教授、滋賀医科大学上島弘嗣名誉教授、東北大学大久保孝義准教授、国立循環器病センター岩井直温部長らと組織する研究グループとして、全世界10億人以上の人が罹患している高血圧症(脳卒中や心臓病を引き起こすリスクファクター)を解決するために設立された、The International Consortium for Blood Pressure Genome-Wide Association Studies (ICBP-GWAS)という国際共同研究組織に参画し、世界規模でのゲノム解析を行うことにより、高血圧症の成因に関与する遺伝子を解明しました。これら遺伝子とその蛋白を解析することにより、新たな創薬や治療の可能性が広がると考えられます。
※本研究は、2011年9月に発刊される英国科学雑誌『Nature』に掲載されます。
【研究の背景】
高血圧症は生活習慣病のうち最多の疾患として日本でも4000万人、世界全体では10億人以上の人が罹患しています。 高血圧症は血圧値140/90mmHgと定義され、日本の死亡原因の第2,3位である心疾患や、脳卒中などの原因となる動脈硬化症の最大の危険因子です。
この高血圧症の約90%が原因不明の高血圧症:本態性高血圧症であり、その成因は3~4割の遺伝因子と6~7割の環境因子が関与していると考えられています。
環境因子は食塩摂取過多、肥満、運動不足、飲酒過多等が挙げられますが、ある程度の生活習慣改善でコントロールしうる因子です。
一方、遺伝因子が明らかになると、いわゆるテーラーメイド医療として予防法・治療法の選択を個々人の遺伝子に合わせて行うことができる可能性が考えられてきました。
2009年全ゲノム領域の約250万個の遺伝子多型と血圧との関係を約2万人の欧米人サンプルを用い検討した結果、全染色体の13領域が血圧と関係することが複数報告されました(Nature genetics,2009)。

【研究の内容】
今回は20万人以上の欧米人サンプルと約3万人の東アジア人、約2.4万人の南アジア人、約2万人のアフリカ人のサンプルを用い、上記研究の遺伝子を含め全ゲノムの250万人SNP(一塩基多型)と血圧との関係が検討されました。
これは全世界の200を超える研究機関(約300人以上の共著者)によるゲノム研究上最大の研究です。
その結果、ATP2B1を含め、欧米人で28種、東アジアで9種、南アジア人で6種の遺伝子が血圧と関連することが明らかとなりました。
これらの遺伝子は水・電解質バランスや腎機能に関連するものなどであり、このうちいくつかは本研究で初めて高血圧との関連が見出された遺伝子です。
一連の研究結果は、本態性高血圧の病因解明と新たな治療ターゲットの導出、個別化医療・予防の可能性を大きく広げる成果です。

http://www.yokohama-cu.ac.jp/amedrc/res/umemura2011_9.html

涌井広道博士らが新規心肥大抑制因子の分子的作用機序についての研究成果をHypertension(米国心臓病協会雑誌 AHA Journal)誌に報告し,編集部コメント付き論文として紹介されました.

2010.05.06
概要:
 大学院医学研究科病態制御内科学の大学院生(4月から附属病院腎臓高血圧内科助教)の涌井広道博士らが行ないました心血管病・生活習慣病増悪因子受容体(アンジオテンシンII受容体)新規結合蛋白 ATRAP (AT1 receptor-associated protein)の病態生理学的意義についての研究成果の一部が,今回, Hypertension(米国心臓病協会雑誌 AHA Journal)の5月号に掲載されました (Hiromichi Wakui, Kouichi Tamura, et al. Cardiac-Specific Activation of Angiotensin II Type 1 Receptor?Associated Protein Completely Suppresses Cardiac Hypertrophy in Chronic Angiotensin II?Infused Mice. Hypertension. 2010;55:1157-1164).

 なお本論文についてはHypertension 5月号において編集部コメント(Zhiping Zhang and Victor J. Dzau. Angiotensin II Type 1 Receptor?Associated Protein Is an Endogenous Inhibitor of Angiotensin II Type 1 Receptor Action in Cardiac Hypertrophy: Role in Check and Balance. Hypertension. 2010;55:1086-1087; published online before print March 15 2010, doi:10.1161/HYPERTENSIONAHA.110.150458)が掲載され,また,学会においては,第82回日本内分泌学会学術総会(前橋)ではシンポジウムに,第32回日本高血圧学会総会(大津)では高得点演題に採用されるなど注目を集めています.


研究内容:
 田村功一准教授らの研究グループは心血管病増悪因子アンジオテンシンII(Ang II)に対する生体での主な受容体であるAT1受容体に特異的に結合する低分子蛋白を単離同定し,その病態生理学的意義の検討と臨床応用への可能性について追求している.
現在までの培養心筋細胞での検討では,アデノベクターによるATRAP過剰発現により持続的なAT1受容体のinternalizationが亢進しAng II刺激による心肥大反応が抑制されることが明らかされた.
また,生体ではATRAPが腎,心などに広く分布し,自然発症高血圧ラットの肥大心ではAT1受容体に対する相対的なATRAP発現量が減少するが,AT1受容体阻害薬投与が心ATRAP/AT1受容体発現比を回復させ心肥大を改善することを報告してきた.
今回涌井広道博士らはATRAPが組織AT1受容体系に対する内在性抑制因子として作用するという仮説を生体で検証するために,心臓特異的ATRAP高発現マウスを作製してAng II持続的負荷による心肥大に与える影響について検討した.
その結果,心臓特異的ATRAP高発現マウスでは,野生型マウスに比較して,Ang II持続的負荷による心肥大が著明に抑制されることを明らかにし,ATRAPが心肥大治療における新たな分子標的となりうる可能性を示唆した.


Hypertension(米国心臓病協会雑誌 AHA Journal) のウエブサイト:http://hyper.ahajournals.org/

閉塞性動脈硬化症に対する血漿吸着療法の長期的臨床効果に関与する分子的作用機序についての研究成果

2010.05.06
池谷裕子博士らが閉塞性動脈硬化症に対する血漿吸着療法の長期的臨床効果に関与する分子的作用機序についての研究成果をArteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology(米国心臓病協会雑誌 AHA Journal)誌に報告しました.
概要:
 横浜市立大学附属病院先進医療推進センターとの協力のもと本附属病院腎臓高血圧内科で施行している『血液透析患者における閉塞性動脈硬化症(ASO)に対するLDLアフェレシス治療』に関する研究成果の一部が,今回, Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology(米国心臓病協会雑誌 AHA Journal) の5月号に掲載されました (Yuko Tsurumi-Ikeya, Kouichi Tamura, et al. Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2010;30:1058-1065).
 本研究は,大学院医学研究科病態制御内科学の大学院生(4月から附属病院腎臓高血圧内科非常勤診療医)の池谷裕子博士,田村功一准教授,戸谷義幸准教授,梅村 敏教授らが中心となって行い,学会においては,第29回日本アフェレシス学会学術大会(広島)ではシンポジウムに,第54回日本透析医学会学術集会・総会(横浜)ではワークショップに採用されるなど注目を集めています.
研究内容:
 維持血液透析患者では多数のリスクファクターを持つために,非透析患者の場合に比べて重症な閉塞性動脈硬化症(ASO)が多いとされている.
治療として,リスクファクターの是正,薬物療法として抗血小板薬やプロスタンデイン製剤や抗トロンビン薬が使用され,血管外科的治療としてインターベンションや血行再建が施行される.
しかし,維持血液透析患者では治療抵抗性の難治例が多く,切断術を施行することが少なくない.LDLアフェレシスは高コレステロール血症をともなう治療抵抗性ASOにも臨床応用されるようになったが,LDLアフェレシスの効果と治療効果の機序に関しては不明な点が多い.
そこで,本先進医療では,慢性維持透析施行中の治療抵抗性の難治性重症ASO患者に対してLDLアフェレシスを施行して臨床症状の改善を目指し,また,LDLアフェレシスの長期的治療効果に関して,分子レベルでの作用機序について検討し,LDLアフェレシスによる酸化ストレス抑制作用,あるいは血液凝固因子や炎症因子の除去作用によって,血管内皮細胞のNO合成酵素の活性化をもたらすことにより血管内皮細胞機能を回復して閉塞性動脈硬化症の症状を改善することを明らかにした.

Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology(米国心臓病協会雑誌 AHA Journal) のウエブサイト:
http://atvb.ahajournals.org/

平成22年度厚生労働省科学研究補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)の研究代表者として,腎臓高血圧内科の田村功一准教授が採択されました.

2010.05.06
概要:  このたび,横浜市立大学附属病院腎臓高血圧内科田村功一准教授らによります,『肥満を伴う高血圧症に対する防風通聖散の併用投与による,24時間自由行動下血圧及び糖脂質代謝・酸化ストレスの改善効果についての研究』が,平成22年度厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)による助成対象研究課題として採択されました.
 本研究では,肥満合併高血圧に対する集学的治療を施行する手段として,西洋学的治療介入に加えて漢方薬を用いた東洋医学的治療介入を併用する手法を用いて治療効果の向上を検証します.
 なお,附属病院腎臓高血圧内科では,2010年6月から専門外来(紹介予約制)としまして,漢方高血圧外来の診療を開始いたします.
研究内容:  肥満と高血圧は相互に密接な関係があり,内臓脂肪型肥満の増悪に伴って臓器合併症が増加する.
よって肥満合併高血圧の治療の目的は,食事・運動療法とともに降圧目標値までの確実な降圧と内臓脂肪型肥満の効率的な改善により,心血管病や腎不全を抑制することである.
またRASの生理活性物質アンジオテンシンII(Ang II)は主要な受容体の1型Ang II受容体に作用して情報伝達系を活性化し,メタボリック症候群や心血管病の発症・進展を促進するため,メタボリック症候群合併高血圧患者に対しては高血圧治療ガイドライン(JSH2009)ではRAS阻害薬が第1選択薬である.
しかしRAS阻害薬単独投与では目標血圧までの確実な降圧が困難な場合が多く併用療法が必要となる.
 一方漢方薬は多種生薬の混合製剤でありその薬効や作用機序は不確定な面が残り臨床試験成績も不十分なため,JSH2009においても治療薬として推奨されるに至っていない.
よって,肥満合併高血圧に対する西洋医学と東洋医学を融合させたさらなる効率的な治療を目指すために漢方薬を併用する根拠となる臨床効果の検討が必要である.
 本研究の結果,肥満合併高血圧に対する東洋医学的治療介入の西洋医学的意義が検証され,肥満合併高血圧に対する集学的治療法における位置付けが可能になると期待される.

厚生労働省厚生労働科学研究費のウエブサイト:
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkyuujigyou/index.html

新城名保美博士が、The 2nd International Aldosterone Forum in Japanで優秀演題賞を受賞

2009.05.18
2009年3月に当科の大学院を卒業した新城名保美博士が、2009年5月16日~17日The 2nd International Aldosterone Forum in Japanにおいて優秀演題賞(若手研究者のinnovation award)を受賞しました。
新城博士は、当科の石上友章准教授、梅村敏教授の指導のもと、本態性高血圧症の分子メカニズムの鍵を握るユビキチン化酵素Nedd4Lが、細胞膜上の上皮性Naチャネルをユビキチン化する反応を触媒する際に、足場として働くと考えられるタンパク質のクローニングに成功しました。
本態性高血圧症の分子治療にむけて、その創薬ターゲットになりうる重要なタンパク質と考えられています。
(文責:石上友章)  先端医科学研究センターのニュースはこちら

消化器内科グループが統合

2009.04.01
 横浜市立大学医学部第2内科学教室は、その発足後の長い歴史の中で循環器内科、腎臓・高血圧内科、消化器内科の3分野を専門領域とし、連携して診療、教育、研究に従事しておりました。
 このたび平成21年度より、横浜市立大学医学部内における消化器内科学教室統合編成にあたり、当教室からも消化器内科グループ所属医師を輩出することとなりました。
 教室発足以来、ともに教室員として歩んできた消化器内科グループが教室を離れることとなり、惜別の思いはありますが、当大学内での新たな統合された消化器内科学教室の誕生にあたり、あえて壮行の意を表するものとします。
 したがいまして今後当教室は、循環器・腎臓内科学教室として新たに教室運営を行っていくこととなりました。
教室の規模としてはやや縮小となりますが、これを機に更なる教室の発展のために団結したいと思っております。
(文責:菅野晃靖)  横浜市立大学 消化器内科のウェブサイトはこちら

「骨髄幹細胞移植による血管新生療法」が先進医療に承認される

2008.12.01
平成20年12月1日、病態制御内科学/循環器・腎臓内科学(梅村敏教授、内野和顕准教授、石上友章准教授)と附属病院循環器内科(石川利之准教授、菅野晃靖准教授)らの研究チームによるトランスレーショナルリサーチ「骨髄細胞移植による血管新生療法(閉塞性動脈硬化症又はバージャー病)」が、厚生労働省の先進医療に承認されました。
 本研究は、近年激増する四肢の動脈硬化性疾患ならびに難病のひとつであるバージャー病に対して、自身の骨髄細胞由来の血管幹細胞を濃縮し、局所に注入することで不足する血管網を回復させ、既存の技術では治療することができない重症下肢虚血から回復させる最新の治療方法です。
 病態制御内科学/循環器・腎臓内科学では、末梢動脈疾患の治療に積極的に取り組んでいます。
附属病院循環器内科と手を携えて最先端の医療を提供することで、末梢動脈疾患で苦しむ方々のためにお役に立てるよう日々奮闘しています。
(文責:石上 友章)
 付属病院 先進医療の紹介はこちら

お問合せ

横浜市立大学医学部 循環器・腎臓・高血圧内科学教室
〒236-0004 横浜市金沢区福浦3-9 A365
TEL:045-787-2635
FAX:045-701-3738

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